Ungeziefer  汚れてしまって生贄にならない生き物
2018.5.29 tue- 6.9 sat
galerie 16
2017年7月、「切妻屋根の痕跡」撮影中に不覚にも左足首を骨折した。
それから3ヶ月、マンションの一室での引きこもり生活が続いた。外出時は松葉杖を使ったが、室内でのちょっとした移動は壁を伝い、床を這った。
寝床のなかで惨めな気分で天井を見ていると、「変身」のグレゴール・ザムザが手招きしている。このまま、誰にも看取られずに冥土へ旅立つ…。
いや、そんなことはありえない。マンションで不審死が発生すると事故物件とされ、不動産価値が激減するという。管理人はそんなリスクを回避するため、密かに各室に監視カメラを設置しているに違いない。
だが、システムに予期せぬトラブルはつきもの。プログラムに潜むungeziefer(バグ)により、住人はすでにこの世にいないにもかかわらず、クラウドに保存された映像データがループし、モニタ内で生き続ける。
そんな情景が浮かんだ。
ギャラリーの中央に1辺1.2mのアングル台があり、その上に1/12のミニチュア・ルームが置かれている。
ザムザの部屋を想定したものである。
部屋の壁面上端がほぼ視線の高さになるため、鑑賞者は背伸びしないと中の様子がよく見えない
部屋の中にはバラバラになった虫ロボットの破片が放置されている。
周囲には、室内を監視するために8台のカメラが設置されており、そのモニタ映像が壁面に投影されている。
監視カメラが捉えたモニタ映像の中では虫ロボットが動き続けている。
虫の頭部には鑑賞者の顔がマッピングされている。
鑑賞者の顔はギャラリー入口に設置された防犯カメラが顔認証システムにより捉えたものである。
顔認証に抵抗感をもつ鑑賞者の為にマスクを用意した。
読売新聞 京都版 2018.6.1 Event & Stage欄 三宅章介展
「汚れてしまって生贄(いけにえ)にならない生き物」カフカの小説「変身」の主人公の部屋をミニチュアで再現。鑑賞者をカメラで撮影し、その顔と虫の身体をその場で合成した画像を壁面に投影する参加型の映像作品。
京都新聞 2018.6.2 三宅章介展
カフカの小説「変身」をテーマにした作品。主人公ザムザの部屋をドールハウスで再現し、玩具の虫がはい回る様子を8台のカメラで撮影した。観客の顔を虫の頭部に映し出すことも可能だ。