切妻屋根の痕跡のための類型学 II Typology for traces of gable roofs
2019.4.4 thu- 4.14 sun
LUMEN ;gallery
8時間の動画をビデオプロジェクタを使って印画紙に露光する。
映像のモチーフは建物の外壁。解体された隣家の痕跡が刻まれている。
陽の光のなかで移ろう陰影が、かってそこにあった人の営みを呟きかける。
一枚の印画紙にそれが焼き付いていく。
定着処理はおこなわないので、環境光に包まれてそのイメージもまた消え去ってゆくだろう。
KYOTO GRAPHIE 京都国際写真展 2019 サテライトイベント KG+2019の一つとして発表した。
会場風景
壁面を撮影した8時間の動画映像
09:00:00:00 | 11:02:07:16 | 11:16:59:20 | 11:24:24:17 |
11:55:54:21 | 12:41:01:17 | 14:21:52:27 | 15:14:25:07 |
3本の動画を壁面に貼った印画紙(3m x 2m)#01〜#03にそれぞれ順次、露光する
プロジェクタの映像が印画紙に焼きつけられていく
6時間経過すると反転現象が始まる(ソラリーゼーション効果)
写遊百珍 2019.04.4 KG+ 2019 三宅章介「切妻屋根の痕跡のための類型学 II」
【KG+】「No-Stop Image」竹下想、楢崎ハル、松岡湧紀、室田光祐/
「切妻屋根の痕跡のための類型学」三宅章介@Lumen gallery (ルーメンギャラリー)
会期は異なるが、Lumen galleryでのKG+、2つの世代の作家の展示である。90年代生まれのデジタルネイティブ世代は、Web世界と日常景を写真で連結する。50年代生まれのメディアアーティストは、印画紙と映像により写真と都市の折り重なる場を生み出した。
以下、二つの展示を順にレポートする。
1.「No-Stop Image」【会期】2019.4/23~4/28
(中略)
2.「切妻屋根の痕跡のための類型学」三宅章介【会期】2019.4/4~4/14
先述のグループ展と対照的に、1950年生まれのメディアアーティストの個展である。
暗い会場の壁4面に巨大な印画紙を貼り出し、プロジェクターで京都の家屋の映像を順次投影してゆく。印画紙は当然、感光するが、定着処理は行われず、約10日間、光に晒され続ける。プロジェクターはそれぞれの壁を順番に照らし、なおかつ動画は3本あるため、一度、家屋の像を焼き込まれても、他の壁が照らされるうちに上からどんどん別の像や光が干渉してゆく。
ギャラリーは暗い箱、「写真」の内部と化す。暗がりの中で、ただ白く広がっているだけのように見える印画紙だが、よく見ると切妻屋根の像が残っている。それもまた長時間露光されるうちに消えるだろう。
切妻屋根の家屋の像が現れては消える、それは京都の街並みとリンクしている。
京都市は景観保全の取り組みとして、「建築物等のデザイン基準」を定めているが、これは該当する区画に建てる物件に対し、京町家などで用いられている切妻屋根のデザインとするよう求めるものだ。また同時に、京都では所有者の代替わりなどによる開発で家屋がどんどん取り壊されている。すると旧来からある切妻屋根の物件が、手前の建物の消滅により、その姿を街の断面として露にする。
空間を使った平面表現。写真の原理を用いた空間表現。表現の形で立ち現れる都市空間。幾重にも交錯する思考と試行のレイヤーが面白い。会場では特に感じていなかったが、改めてこうして他の展示と比較しながら書き起こしてみると、ただならぬ作品だったように思う。
(hyperneko氏のブログ写遊百珍より)